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[建設業許可]

【特定建設業の財産的基礎の要件】を財務コンサル目線で解説

  • 投稿:2025年07月14日
【特定建設業の財産的基礎の要件】を財務コンサル目線で解説

建設業界において、元請けとして大規模な工事を請負い、下請け業者を統括する「特定建設業」は、その社会的な役割の大きさから、非常に厳格な要件が課されています。特に、「ヒト・モノ・カネ」という経営の三要素の中でも、「カネ」、すなわち財産的基礎の要件は、他の業種と比較してもそのハードルの高さが際立っています。なぜ特定建設業者にはこれほど厳しい財産的要件が求められるのでしょうか。そして、具体的にどのような要件があり、日頃からその要件を維持していくためにはどのような取り組みが必要なのでしょうか。今回は、財務コンサルタントの視点から、これらの点について詳しく解説していきます。

なぜ特定建設業には厳しい財産的要件が課されるのか?

特定建設業が元請けとして大規模な工事を請負い、その一部を下請け業者に発注するというビジネスモデルを考えると、その理由が明確になります。もし元請けである特定建設業者が資金繰りに窮し、下請け業者への支払いが滞るような事態になれば、下請け業者も連鎖的に倒産するリスクが高まります 。このような事態は、建設業界全体の信用を揺るがし、ひいては社会経済にも大きな影響を及ぼしかねません。そのため、特定建設業者には、万が一の事態にも対応できるだけの強固な財務基盤が求められ、それが財産的要件として具体化されているのです 。これは、発注者や下請け業者の信頼に応えるための、特定建設業者としての責任を果たすための条件と言えるかもしれません。

特定建設業者に求められる財産的基礎の具体的な内容

特定建設業の許可を受けるためには、以下の4つの財産的要件をクリアする必要があります。これらの要件は相互に関連しており、一つでも基準を満たさない場合は許可が認められません。

欠損の額が資本金の20%を超えないこと

この要件は、企業のP/L(損益計算書)における赤字の累積である繰越欠損金が、資本金の20%を超えてはならないというものです 。例えば、資本金が2,000万円の会社であれば、繰越欠損金が400万円以上になってはなりません。これは、特定建設業を営む上で、継続的な黒字経営がいかに重要であるかを物語っています 。一度や二度の赤字であれば、増資などで対応することも可能ですが、連続して赤字決算が続く場合、この要件を満たすことが極めて困難になります。日頃から収益性を意識した経営が不可欠です。

流動比率75%以上

流動比率は、企業の短期的な支払い能力を示す重要な財務指標です 。その計算式は以下のとおりです。

流動比率 = 流動資産 / 流動負債 × 100

ここで言う「流動資産」とは、現金・預金、完成工事未収入金、未成工事支出金、有価証券など、比較的短期間で現金化できる資産を指します 。一方、「流動負債」とは、短期借入金、工事未払金、買掛金など、1年以内に返済期限が到来する負債のことです 。

特定建設業に求められる流動比率75%以上という基準は、流動資産をすべて現金化したとしても、流動負債のすべてを返済しきれない可能性があることを意味します 。一般的に、流動比率が200%以上であれば健全とされていますので、流動比率75%は、最低限の支払い能力を確保するためのラインだと言えます。つまり、この比率を下回ることは、資金繰りの悪化を示唆し、事業継続に支障をきたす恐れがあることを意味します。常に流動性を意識し、手元の資金や売掛金の回収状況、買掛金や借入金の支払いスケジュールを管理することが重要です。

資本金の額が2,000万円以上

特定建設業の許可を受けるためには、資本金の額が2,000万円以上であることが必須条件となります 。これは、事業規模に見合った自己資本を持つことを求めるものであり、企業の体力や信頼性を測る一つの基準となります。

純資産の額が4,000万円以上

純資産の額が4,000万円以上であることも、特定建設業の財産的基礎の要件の一つです 。純資産とは、会社の総資産から負債を差し引いたものであり、企業の財務安定性を示す重要な指標です。この要件は、前述の「欠損の額が資本金の20%を超えないこと」という要件とも密接に関連しています 。継続的な赤字は純資産を減少させるため、純資産4,000万円以上を維持するためには、赤字を出さない堅実な経営が求められます 。

特定建設業の財産的基礎を維持するポイント

特定建設業の財産的基礎を維持していく上で、最も重要かつ基本的なポイントは「赤字を出さない経営」を徹底することに尽きます 。赤字が発生すると、繰越欠損金が増加し、純資産が減少し、ひいては流動比率にも悪影響を及ぼす可能性があります。まさに「赤字を出すと全体の項目が狂い始めてしまう」と言えるでしょう 。 しかし、事業を継続する上で、予期せぬ事態や市場の変動により、一時的に大きな赤字が発生してしまう可能性もゼロではありません。もし、やむを得ず大きな赤字を出してしまった場合は、速やかに以下のような対策を講じることが重要です。

  • 増資: 新たな株式を発行し、株主から資金を調達することで、資本金や純資産を増加させることができます 。これは、財務体質を根本的に改善するための有効な手段です。
  • 資金調達: 金融機関からの借入など、外部からの資金調達も一時的な資金不足を補う手段となります。ただし、負債が増加するため、流動比率への影響も考慮する必要があります。
  • 経費の見直しと削減: 無駄な経費を徹底的に見直し、削減することで、利益を確保し、赤字幅を縮小することができます。
  • 売上拡大施策: 新規案件の獲得や、既存案件の利益率向上など、売上を拡大するための施策を積極的に実行することも重要です。

これらの対策は、一時的な危機を乗り越えるだけでなく、将来にわたって安定した経営基盤を築くためにも不可欠です。日頃から事業計画を綿密に立て、財務状況を常に把握し、問題の兆候を早期に察知して手を打つ「予実管理」の徹底が、特定建設業の財産的基礎を維持するための鍵となります。

まとめ

特定建設業に課される厳しい財産的要件は、下請け業者保護や業界全体の信頼維持、そして公共の利益を守るために必要不可欠なものです。これらの要件をクリアし、維持していくことは、特定建設業者としての社会的責任を果たすことになります。つまり、特定建設業者にとって、財務管理は単なる数字の管理ではなく、企業の存続と成長、そして社会貢献に直結する重要な経営戦略と言えます。

もし、財産的基礎要件に不安があるようでしたら、ぜひ私たちのような財務の専門家にご相談ください。貴社の財務状況を深く理解したうえで、適切な対応策を一緒に検討させていただきます。(お問い合わせはこちら)

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