
行政書士
財務コンサルタント
磯村 威暢
2,000万円の負債がある会社を復活させた財務管理力と、採用から資金繰り、設備投資まで、経営者として20年のキャリアで培った問題解決力を活かして中小建設業者の経営をトータルサポート。
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[建設業許可]
中小建設業者にとって、金融機関からの融資は事業継続の生命線とも言える存在です。しかし、知らず知らずのうちに「建設業法違反」に該当する行為をしてしまい、その結果として融資が受けられなくなるケースがあることをご存じでしょうか?
本記事では、建設業許可を取得せずに500万円以上の工事を請け負った場合に、どのような法的リスクや金融機関からの評価低下が生じるのかを解説します。
目次
建設業法では、1件あたりの請負金額が500万円(税込)以上の工事を請け負う場合、原則として建設業許可が必要と定められています。
この規定は、発注者を保護するためのものであり、一定の技術力・財務基盤・実績を持つ事業者でなければ、大規模な工事を請け負うことができないようにするための制度です。
つまり、500万円以上の工事を請け負うには、建設業許可を取得していることが前提条件となります。
建設業許可を取得せずに500万円以上の工事を請け負った場合、以下のような罰則が科される可能性があります。
3年以下の懲役
300万円以下の罰金
またはその両方(建設業法第47条)
さらに、法人が違反した場合には、法人自体に対して最大1億円以下の罰金が科される可能性もあります(建設業法第53条)。
そして、これらの罰則が確定すると、建設業許可の「欠格要件」に該当し、その後5年間は許可を取得できなくなるという重大な影響もあります。
実務の現場では、以下のような誤解がよく見られます。
❌ 請求書を分割すればOK? 「1件の工事でも、請求書を分割して500万円以下にすれば大丈夫」と思っている方がいますが、これは誤りです。契約金額ベースで判断されるため、請求書をいくら分割しても、1件の工事として見なされます。
❌ 月ごとの請求が500万円以下ならOK? 「月をまたいで請求すれば大丈夫」と考える方もいますが、これもNGです。請負契約の総額で判断されるため、月ごとの金額が500万円以下でも、契約総額が500万円を超えていれば違反となります。
ここからが本題です。無許可で500万円以上の工事を請け負った場合、金融機関からの融資に深刻な影響が出る可能性があります。
● 公的融資が通らなくなる 中小建設業者の多くは、信用保証協会の保証付き融資や日本政策金融公庫などの公的融資制度を活用しています。しかし、無許可工事の事実が発覚すると、これらの融資はまず通りません。
しかも、保証協会や公庫は過去の申請履歴や違反情報を共有しているため、違法事業者としての履歴が残り、一定期間は融資審査に通らない可能性があります。
● プロパー融資もハードルが高い 「じゃあ、民間のプロパー融資を受ければいい」と思うかもしれませんが、これも簡単ではありません。財務基盤が弱い中小建設業者に対して、金融機関が無担保・無保証で融資を行うことは非常に稀です。
つまり、無許可工事を行ったことで、公的融資もプロパー融資も受けられなくなる=資金調達の道が閉ざされるという、非常に深刻な事態に陥る可能性があるのです。
「つい、できごころで…」という軽い気持ちで無許可工事を請け負ってしまった結果、以下のようなリスクが現実になります。
・金融機関からの信用失墜
・融資が受けられず資金繰りが悪化
・許可取得が5年間できず、事業拡大が困難に
・最悪の場合、廃業や倒産に追い込まれる
建設業許可の取得には、一定の手間や費用がかかります。しかし、それを「コスト」と捉えるのではなく、信用を得るための投資と考えるべきです。
許可を取得していれば、堂々と500万円以上の工事を請け負うことができ、金融機関からの評価も高まり、資金調達の選択肢も広がります。
「まだ許可を取っていない」「許可を取るか迷っている」という方は、ぜひ一度、専門家に相談してみてください。許可を取ることで、未来の選択肢が大きく広がることを、ぜひ知っていただきたいと思います。
当事務所では、建設業許可の取得は単なる事務的手続きではなく、建設事業者にとって重要な経営戦略の一つと考えています。資金繰りや資金調達に関するご支援も行っておりますので、建設業の経営に関するお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。(お問い合わせはコチラ)
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