
行政書士
財務コンサルタント
磯村 威暢
2,000万円の負債がある会社を復活させた財務管理力と、採用から資金繰り、設備投資まで、経営者として20年のキャリアで培った問題解決力を活かして中小建設業者の経営をトータルサポート。
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[建設業許可]
建設業許可を取得する際には、いくつかの要件を満たす必要があります。その中でも「財産的基礎要件」は、事業者の財務状況に関わる重要な項目です。特に「純資産500万円以上」という基準があるため、債務超過の企業は「許可取得は無理なのでは?」と不安に感じるかもしれません。
しかし、実は債務超過でも建設業許可を取得することは可能です。本記事では、財産的基礎要件の背景や満たし方、債務超過で許可を取得した場合の注意点、そして純資産改善の方法について、行政書士としての実務経験を踏まえて解説します。
目次
建設業許可制度において、財産的基礎要件が設けられている最大の理由は「発注者保護」です。
建設業許可を取得すると、500万円以上の工事を請け負うことが可能になります。これは大きな責任を伴う契約です。もし、許可業者が工事の途中で倒産してしまった場合、発注者は工事の中断や損害を被るリスクがあります。
そのような事態を未然に防ぐため、一定の財務基盤を持つ事業者にのみ許可を与えることで、発注者の保護と業界の健全性を確保しているのです。つまり、財産的基礎要件は「フィルター」として機能しており、財務的に脆弱な事業者が大規模工事に参入することを防いでいます。
財産的基礎要件には、以下の2つの選択肢があります。
実務上、純資産が500万円未満であっても、500万円以上の通帳残高証明書を提出することで要件を満たすことができます。つまり、債務超過であっても、一定の資金を確保していることを証明できれば、建設業許可の取得は可能です。
この点は、資金調達力を重視する制度設計になっているとも言えます。資金調達能力があるということは、事業継続の可能性があると判断されるため、許可取得のハードルを下げることができるのです。
「通帳残高で要件を満たせるなら、債務超過でも問題ない」と思われるかもしれませんが、許可取得後には別のリスクが生じます。
建設業許可を取得すると、毎年の決算内容を行政庁に報告する義務が生じます。さらに、その決算情報は一般公開されるため、誰でも閲覧可能になります。
これは、取引先が新規取引を検討する際に、貴社の財務状況を確認する材料となります。もし、債務超過の状態が続いていると、信用面で不利になり、取引を見送られる可能性もあります。
つまり、許可取得後は「公的な存在」としての責任が増すため、財務状況の健全化に向けた取り組みが一層重要になります。
純資産を改善するための最も堅実かつ確実な方法は、やはり「利益を上げること」です。これは、企業の本業でしっかりと収益を確保し、損益計算書上の当期純利益を積み重ねていくことで、貸借対照表の繰越損失を減らし、最終的に純資産をプラスに転じさせるという王道のアプローチです。
具体的には、以下のような取り組みが重要になります:
これらの取り組みを継続的に行うことで、毎期の利益が蓄積され、債務超過の状態から脱却することが可能になります。
中小企業の場合、社長や役員が会社に対して多額の貸付を行っているケースも少なくありません。この「役員貸付金」を資本金に振り替えることで、純資産を改善する方法があります。これが「デット・エクイティ・スワップ(DES)」です。
DESは、債務(Debt)を資本(Equity)に転換する手法であり、財務諸表上の純資産を一気に改善することが可能です。ただし、実行には税務・法務の確認が必要であり、専門家の支援を受けることが望ましいです。
また、DESはあくまで「役員貸付金があること」が前提となるため、すべての企業に適用できるわけではありません。
債務超過でも建設業許可を取得することは可能です。しかし、それはあくまで「スタートラインに立てる」ということに過ぎません。
許可取得後は、財務情報が公開されることで、企業としての信用力が問われる場面が増えていきます。だからこそ、許可取得後こそ、財務改善に本気で取り組む必要があります。
「許可取得はゴールではなく、信頼される企業への第一歩」——この視点を持って、ぜひ前向きに取り組んでいただければと思います。
当事務所では、建設業許可の取得は単なる事務的手続きではなく、建設事業者にとって重要な経営戦略の一つと考えています。資金繰りや資金調達に関するご支援も行っておりますので、建設業の経営に関するお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。(お問い合わせはコチラ)
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