
行政書士
財務コンサルタント
磯村 威暢
2,000万円の負債がある会社を復活させた財務管理力と、採用から資金繰り、設備投資まで、経営者として20年のキャリアで培った問題解決力を活かして中小建設業者の経営をトータルサポート。
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[持続可能な経営支援]
銀行に融資の依頼をする際に、単に「融資をお願いします」と言っても銀行は貸してはくれません。融資を依頼するうえで、押さえておかなければならないポイントがあります。このポイントを押さえているかどうかで、融資審査の通り具合は格段に変わってきます。そこで今回は、銀行に融資を依頼する際に大切な6つのポイントについて詳しく解説してまいります。これらのポイントを理解し、適切に準備することで、融資の成功率を高めることができます。
中小企業の中には、「借りられるだけ借りたい」や、「どれくらいまでなら借りられる?」と言う社長がいますが、金融機関(以降銀行)から借りて欲しいと言われているならまだしも、こちらから融資依頼をする際にこのような姿勢ではどこの銀行も融資には応じてくれません。銀行は、融資先の事業計画や返済能力を厳しく審査し、リスクを評価した上で融資金額を決定します。したがって、具体的な事業計画に基づいた明確な資金使途と、その金額の妥当性を説明できなければ、銀行からの信頼を得ることは難しいでしょう。
どのような目的で、どれだけの金額が必要かを明確に示したうえではじめて融資の交渉が始まります。したがって、必要金額を検討するには、事業計画がないと金額を見積もることもできません。事業計画書には、売上計画、費用計画、資金繰り計画などを詳細に記載し、その中で融資希望額の根拠を明確に示す必要があります。
「資金使途」とは融資を受けるお金の使い道です。資金使途を明確にすることは、融資申込みにおいて極めて重要なことです。資金使途のはっきりしない融資に銀行が応じることはありません。資金使途は、「運転資金」と「設備資金」の2つに分けられます。運転資金とは、材料の仕入れや従業員の給料など会社運営に必要な資金です。一方、設備資金とは、事務所や店舗、工場などの建物や機械設備、車両などを購入するための資金です。
設備資金の場合は、資金使途が明らかですので、必要な金額も見積書やカタログを銀行に提出すれば資金使途の説明はつきます。一方、運転資金とは、材料の仕入れや従業員の給料など会社運営に必要な資金です。具体的には、人件費、仕入費、外注費、家賃、水道光熱費などが含まれます。運転資金は、日々変動するため、資金使途が不明確になりがちですが、銀行は、融資した資金が事業運営に適切に使用されることを確認する必要があります。そのため、運転資金の資金使途を明確にするためには、ひと月当たりの人件費や仕入費、外注費などの費用の詳細が分かる資料(給料明細、請求書など)の提出が必要となります。
付合いが長く、会社の実状をよく把握している銀行であれば、運転資金の資金使途を明確に示さなくても融資に応じてくれることもありますが、基本的には運転資金であっても資金使途を明確に示すことができなければ融資は受けられないと考えておくべきでしょう。
「返済財源」とは、融資を受けた資金を返済するための財源を明らかにすることです。短期融資の場合は、売上金や回収サイトによる入金が主な返済財源となり、長期融資の場合は、事業活動から得られるキャッシュフローが返済財源となります。したがって、長期融資を申し込む場合は、しっかりと利益が出て返済をしていくことができる経営計画を立て、それを5カ年損益計画書や資金繰り表で銀行にアピールすることが重要です。
キャッシュフローは、「税引き後利益+減価償却費」で算出されるのが一般的ですが、より正確には、減価償却費以外にも現金支出を伴わない費用をプラスし、現金収入を伴わない収益を引いて算出します。
損益計画書や資金繰り表で、借入金が返済できる資金繰りになっていることはもちろん、過去の財務諸表も銀行は確認します。過去の決算書、試算表などでしっかりと利益が出ており、返済能力があるということをアピールすることも重要です。
損益計画書や資金繰り表で、借入金が返済できる資金繰りになっていなければ、銀行はその会社に融資することを危険と判断する可能性が高くなります。
「保全」とは、「保証人」や「担保」のことを指します。銀行にとって融資先の業績が悪化し、資金の回収ができなくなっては困りますので、連帯保証人を付けたり、土地や建物に抵当権を設定して、リスクヘッジしておきます。こうすることで、万一、融資先が返済不能に陥ったとしても、銀行は保証人に返済を求めることができますし、土地や建物を売却して返済に充てることができます。
中小企業の融資においては、経営者保証(社長保証)は、依然として求められることが多いのが現状です。しかし、近年では、経営者保証ガイドラインが運営され、経営者保証に過度に依存しない融資慣行の確立が目指されています。このガイドラインでは、経営者の誠実性や事業の継続性などを評価し、経営者保証に代わる他の手段(例えば、法人としての連帯保証や、第三者保証など)を検討することが推奨されています。とは言え、中小企業の信用力では、経営者保証が必須となる場面が多いので、経営者保証は必須と考えた方が良いでしょう。
担保については、不動産(土地、建物)が一般的ですが、預金、売掛金、有価証券、在庫、機械設備なども担保となります。それぞれの担保には、評価方法や換金性に違いがあるため、銀行は担保の種類や価値を慎重に審査します。また、信用保証協会による保証も、銀行にとっては重要な保全手段となります。信用保証協会は、中小企業の信用力を補完し、銀行融資を促進する役割を担っています。信用保証協会の保証を利用することで、中小企業は担保や保証人がなくても融資を受けやすくなります。
「返済期間」とは、融資を受けたお金を何年かけて返済するかという期間のことです。1年以内の借入期間は短期融資、借入期間が1年以上になるものは長期融資と言います。金融機関にとって返済期間が長くなると、融資先企業の業績変動リスクを背負うことになります。そのため、一般的に、返済期間が長いほど金利は高く、短いほど金利は低くなります。
一般的に、運転資金の場合の返済期間は5年から7年、設備資金の場合は、導入する設備の減価償却期間に連動するため一概には言えませんが、おおよそ5年から15年くらいになることが多いです。
返済期間を決定する際には、企業の財務状況だけでなく、事業計画や資金繰り計画も考慮する必要があります。返済期間を長く取ることで、月々の返済額を抑え、資金繰りに余裕を持たせることができます。しかし、返済期間が長くなるほど、総返済額は増加します。一方、返済期間を短くすることで、総返済額を抑えることができますが、月々の返済額が増加し、資金繰りが厳しくなる可能性があります。
多くの中小企業が資金繰りに余裕がないことを前提に置くと、返済期間を長く取れた方が資金繰りに余裕が生れます。そのため、多少金利が高くなったとしても、返済期間を取った方が良いケースが多いでしょう。しかし、企業の財務状況や事業計画によっては、返済期間を短くした方が良い場合もありますので、あくまでケースバイケースではあります。
金利が高くなったり、低くなったりする要因は、前述した返済期間の他に、融資を依頼した企業の財務状況や収益力、担保の有無、信用保証協会の保証の有無、金融機関との取引実績、景気動向などによっても変わってきます。
金利が高いか、低いかのおおよその判断目安は、以下のとおりです。
ただし、これらの金利水準はあくまで一般的な目安であり、企業の状況や金融機関によって異なります。金利交渉においては、企業の財務状況や事業計画を適切に説明し、金利引き下げの交渉を行うことが重要です。
以上、融資を申込むうえで押さえておきたい6つのポイントについて解説してまいりました。中小企業にとって銀行からの融資は重要な経営戦略の一つであるはずなのですが、中小企業の中には、銀行への融資依頼を意外と軽く考えている社長もいらっしゃいます。しかし、銀行は、企業の将来性や返済能力を過去の財務状況や事業計画、経営者の資質など、多岐にわたる項目で厳しく審査します。安易な気持ちで融資を申し込んでも、銀行の厳しい審査を通過することはできません。
融資を成功させるためには、今回解説したポイントをしっかりと押さえるだけでなく、日頃から財務状況を改善し、事業計画を明確化し、銀行との良好な関係を構築しておくことが重要です。また、融資以外にも、補助金、助成金、投資など、様々な資金調達手段があります。自社の状況に合わせて、最適な資金調達戦略を検討することが重要です。
銀行融資は、中小企業の成長を支える重要な資金調達手段です。しかし、融資を受けるためには、銀行の審査基準を理解し、しっかりと準備する必要があります。今回の記事が、皆様の融資成功の一助となれば幸いです。
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