
行政書士
財務コンサルタント
磯村 威暢
2,000万円の負債がある会社を復活させた財務管理力と、採用から資金繰り、設備投資まで、経営者として20年のキャリアで培った問題解決力を活かして中小建設業者の経営をトータルサポート。
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[持続可能な経営支援]
中小企業経営者の皆さんにとって、資金調達は常に頭を悩ませる問題かもしれません。事業の成長、設備投資、あるいは予期せぬ資金繰りの悪化など、様々な場面で資金が必要となります。理想としては、必要な時にいつでも金融機関からスムーズに融資を受けられることですが、企業経営には波があり、時には一刻を争う資金調達を迫られることもあるでしょう。
そんな緊急時における資金調達の重要な選択肢として、ノンバンクからの融資という手段があることを、中小企業の経営者の皆様はぜひ知っておいていただきたいと思います。もちろん、低金利で安定的な融資が期待できる金融機関からの融資は、依然として資金調達の王道です。しかし、ノンバンクは、そのスピーディーな審査や柔軟な対応によって、緊急時の資金需要に対する頼れる一手となり得ます。
本記事では、ノンバンクがどのような仕組みで融資を行っているのか、そして中小企業経営者の皆さんがノンバンクを賢く活用するための具体的な方法について、詳しく解説してまいります。ノンバンクの特性を理解し、上手に活用することで、資金調達の選択肢を広げ、より安定した企業経営に繋げていただければと思います。
ノンバンクとは、その名の通り、預金業務を行わずに貸金業務を専門とする金融機関の総称です。銀行のように預金を集めてそれを原資に融資を行うのではなく、主に金融機関からの借入や社債の発行によって調達した資金を、個人や法人に融資します。具体例としては、私たちの生活に身近な信販会社、クレジットカード会社、消費者金融会社(一般的にカードローンとして知られています)、そして企業の資金調達をサポートする事業金融会社(ビジネスローン)、航空機や工作機械などの設備投資を支援するリース会社などが挙げられます。
ノンバンクが銀行と大きく異なる点は、預金業務を行わないという点にあります。そのため、資金調達のコストは銀行に比べて高くなる傾向があり、それが貸出金利にも反映され、一般的に銀行融資よりも金利が高めに設定されています。
ここで特に強調しておきたいのは、ノンバンクと闇金は全くの別物であるということです。一部には両者を混同している方もいますが、闇金は、貸金業に必要な登録をせずに違法に高金利で貸し付けを行う犯罪行為です。健全な金融サービスを提供するノンバンクとは明確に区別し、正しい知識を持つことが重要です。
かつてのノンバンクは、担保や保証に頼らない無担保融資を積極的に展開し、多くの中小零細企業にとって重要な資金調達の手段となっていました。当時の背景として、出資法で定められていた上限金利が29.2%という比較的高水準であったことが挙げられます。多くのノンバンクが、このいわゆるグレーゾーン金利と呼ばれる金利水準で貸付を行っていました。
しかし、平成22年6月にこのグレーゾーン金利が撤廃され、利息制限法の上限金利が引き下げられたことで、ノンバンクの融資スタンスは大きく変化しました。現在では、事業者向けの高金利な無担保融資は採算が合わなくなり、積極的に行うノンバンクは非常に少なくなっています。
そのため、現在のノンバンクに期待できる融資は、比較的少額なものが中心となっています。貸付金額の規模も一般的に100万円から500万円程度であり、大規模な資金調達には適さない状況にあると言えるでしょう。
ノンバンクからの融資の金利は、一般的に銀行をはじめとする金融機関の金利と比較すると、かなり高い水準となります。特に担保を必要としない無担保融資の場合、そのリスクを反映して、利息制限法の上限金利に近い15%から20%程度になるケースが少なくありません。これは、ノンバンクが預金業務を行わず、主に金融機関からの借入や社債発行によって資金を調達しているため、資金調達コストが金融機関よりも高くなることが主な要因です。
したがって、ノンバンクは、まとまった大きな金額を長期間にわたって借り入れるという目的には、金利負担の面から不向きであると言わざるを得ません。しかし、その一方で、必要な時に比較的迅速に、かつ煩雑な手続きを省いて小さな金額を短期間だけ借り入れたいというニーズに対しては、その柔軟性とスピーディーな対応から非常に便利で使い勝手の良い選択肢となります。
緊急時のつなぎ資金や、一時的な運転資金など、短期間での利用を前提とする場合に、ノンバンクは有効な手段となり得ます。
前述の通り、ノンバンクは、その手続きの簡便さと審査のスピードにおいて、資金調達を急ぐ中小企業にとって大きなメリットとなります。しかし、この利便性の裏側には、いくつかの注意すべき点が存在します。特に、銀行をはじめとする金融機関は、融資先の企業がノンバンクから資金調達を行っている事実を、財務状況の悪化や資金繰りの逼迫の兆候と捉え、その後の融資審査においてマイナスに評価する傾向があります。
したがって、ノンバンクからの借入は、あくまで一時的な資金需要に対応するための短期的な手段と捉えるべきです。可能な限り、決算期を迎える前に借入金を全額返済することを強く推奨します。これにより、金融機関が企業の財務状況を評価する際に参照する決算書の融資先一覧に、ノンバンクの会社名が記載されることを避けることができます。
これまで解説してきたように、ノンバンクは中小企業にとって、急な資金需要が発生した際や、金融機関の融資が難しい状況下において、迅速な資金調達を可能にする心強い存在となり得ます。そのスピーディーな審査と比較的柔軟な融資姿勢は、事業継続や成長の一時的なサポートとして有効に機能するでしょう。
しかし、その一方で、金融機関と比較して高めの金利設定や、金融機関からの評価に影響を与える可能性など、活用方法を誤ると企業経営を圧迫し、将来的な資金調達の選択肢を狭めてしまう危険性もはらんでいます。
したがって、中小企業経営者の皆さんは、ノンバンクのメリット(迅速性、手続きの簡便さなど)とデメリット(高金利、金融機関からの評価低下リスクなど)を十分に理解し、自社の財務状況や資金繰りの状況を慎重に見極めた上で、短期的な視点でのみ利用するといった明確なルールを設けることが重要です。
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