行政書士
財務コンサルタント
磯村 威暢
2,000万円の負債がある会社を復活させた財務管理力と、採用から資金繰り、設備投資まで、経営者として20年のキャリアで培った問題解決力を活かして中小建設業者の経営をトータルサポート。
CONTENTS
[売上アップ支援]
「材料費は上がっているのに請負単価は変わらない」「人件費を上げたいが元請との関係を考えると交渉しづらい」。
こうした悩みを抱える下請建設業者は少なくありません。
建設業界では長年、元請と下請の力関係から、コスト上昇分を十分に工事代金へ反映できないケースが見られてきました。しかし近年は状況が変わりつつあります。資材価格の高騰や人手不足の深刻化を背景に、国土交通省は元請企業に対して適正な価格転嫁への対応を求める姿勢を強めています。
結論から言えば、現在は下請建設業者にとって価格交渉を行いやすい環境になっています。ただし、だからといって根拠のない値上げが認められるわけではありません。
本稿では、国交省の動向を踏まえながら、下請建設業者が価格転嫁に取り組むべき理由と、成功するために必要な財務管理の重要性について解説します。
建設業を取り巻く環境はここ数年で大きく変化しました。
鋼材や木材などの資材価格は上昇し、燃料費も高止まりしています。さらに建設業では慢性的な人手不足が続いており、人材確保のためには賃金改善も避けて通れません。
こうした状況の中で国土交通省は、元請企業に対し下請企業との適正な取引を促しています。従来のようにコスト上昇分を下請だけに負担させるのではなく、発注者から元請、元請から下請へと適切に価格転嫁が行われることが重要視されています。
その背景には、建設業界全体の持続可能性という大きな課題があります。
下請業者が適正な利益を確保できなければ、人材育成も設備投資もできません。結果として担い手不足が進み、業界全体の生産力低下につながります。
つまり価格転嫁は、単に一企業の収益改善の問題ではなく、建設業界全体を維持していくための重要なテーマなのです。
昔であれば「値上げをお願いするのは気が引ける」と考える事業者も多かったかもしれません。しかし現在は、合理的な価格改定を求めること自体が不自然な行為ではなくなりつつあります。
とはいえ、現場感覚としては「本当に値上げ交渉をして大丈夫なのか」と感じる経営者も多いでしょう。
建設業界では昔から元請との関係が重視されてきました。仕事を継続的に受注するためには、取引先との信頼関係が非常に重要だからです。
しかし現在は元請企業側も価格転嫁に関する社会的な要請を受けています。
もちろんすべての元請企業が積極的に価格改定へ応じるわけではありません。しかし以前と比べれば、交渉のテーブルにつきやすい環境になっていることは事実です。
重要なのは、感情論で交渉しないことです。
例えば、
– 資材価格がどれだけ上昇したのか
– 労務費がどれだけ増加したのか
– 実際の利益率がどの程度低下しているのか
こうした数字を整理して説明することで、元請側も社内で説明しやすくなります。
価格交渉は対立ではありません。
継続的に品質の高い施工を提供するために必要な協議です。その認識を持つことで、より建設的な話し合いが可能になります。
ここで誤解してはいけないポイントがあります。
国土交通省が価格転嫁を推進しているからといって、どのような値上げでも認められるわけではありません。
実際の交渉では、「なぜ価格改定が必要なのか」を説明する根拠が求められます。
例えば、
「利益が少ないから」
「他社も値上げしているから」
という説明だけでは十分な説得力がありません。
元請企業も発注者へ説明責任を負っています。そのため、合理的な根拠が示されない価格改定は受け入れにくいのが現実です。
ここで重要になるのが原価管理です。
材料費、労務費、外注費、車両費、現場経費などを把握していれば、「原価がこれだけ増加しているため、この範囲で価格改定が必要」と説明できます。
一方で、どんぶり勘定の状態では根拠を示すことができません。
社長の感覚では利益が出ていないと思っていても、数字で証明できなければ交渉材料にはなりません。
価格転嫁は国の後押しだけで実現するものではなく、自社の数字を説明できる体制があって初めて成功しやすくなるのです。
実務上、価格転嫁に成功する会社には共通点があります。
それは原価管理と利益管理ができていることです。
例えば工事ごとの利益率を把握している会社は、どの工事で利益が出ているのか、どの工事が赤字なのかを把握できます。また、利益を圧迫している要因も分析できます。
そうすると、
「人件費が前年比で○%上昇している」
「外注費がこれだけ増加している」
「現在の利益率では人材採用が難しい」
といった具体的な説明が可能になります。
反対に、決算書を見るまで利益状況がわからない会社では、価格交渉の根拠づくりが難しくなります。
価格転嫁は営業力だけで決まるものではありません。
実は財務管理のレベルによって大きな差が生まれます。
現場の数字と経営の数字がつながっている会社ほど、適正な単価を主張しやすくなり、利益を確保しながら事業を成長させることができます
ここからが本題です。
価格転嫁は単価を上げるための取り組みではなく、利益を守るための取り組みです。
そして利益を守るための最大の武器が財務管理なのです。
国土交通省が元請企業に価格転嫁への対応を求めている今、下請建設業者にとっては大きな追い風が吹いています。
これまで言い出しにくかった価格交渉も、以前より取り組みやすい環境が整いつつあります。
しかし、価格転嫁は「お願い」だけで実現するものではありません。根拠のない値上げは認められず、原価や利益の状況を数字で説明できることが重要になります。
そのためには日頃から、
– 工事別採算管理
– 原価管理
– 利益管理
– 資金繰り管理
といった財務管理を行うことが欠かせません。
私が建設業者の財務支援を行う中でも、「もっと早く数字を見える化しておけばよかった」という声をよく耳にします。
価格転嫁のチャンスが広がっている今だからこそ、自社の利益構造を正しく把握し、数字を武器にできる経営体制を整えることが重要です。
財務管理は単なる経理業務ではありません。利益を守り、適正な単価で仕事を受注し、会社を成長させるための経営ツールです。
今の数字管理が、これからの利益体質や事業の成長を大きく左右します。価格転嫁という追い風を最大限に活かすためにも、自社の財務管理のあり方を改めて見直してみてはいかがでしょうか。
建設業許可は、取得することが目的ではありません。会社の成長につなげてこそ、本当の価値があります。
いそむら行政書士事務所は、江戸川区・葛飾区を中心に東京東部エリアで建設業に専門特化し、建設業許可の取得はもちろん、その後の資金繰りや経営改善、事業の成長まで一貫してサポートしています。
20年以上の経営経験を活かし、税理士・社労士・金融機関などの専門家とも連携しながら、建設会社が抱える経営課題をワンストップで支援します。(お問合せは公式LINEより)
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