行政書士
財務コンサルタント
磯村 威暢
2,000万円の負債がある会社を復活させた財務管理力と、採用から資金繰り、設備投資まで、経営者として20年のキャリアで培った問題解決力を活かして中小建設業者の経営をトータルサポート。
CONTENTS
[建設業許可]
近年、国土交通省は建設業における一人親方との取引適正化を進めています。契約内容の明確化や書面による取引条件の確認などが求められるようになり、「これまでのやり方で大丈夫なのだろうか」と感じている建設業者も少なくないでしょう。
建設業界では長年にわたり、一人親方という働き方が重要な役割を担ってきました。慢性的な人手不足が続く中で、高い専門技術を持つ職人が独立し、元請企業や下請企業と協力しながら現場を支えている実態があります。
一方で、一人親方をめぐっては以前から「偽装一人親方」と呼ばれる問題も指摘されてきました。
もちろん、取引適正化が直接的に偽装一人親方対策として打ち出されているわけではありません。しかし、契約内容や取引実態を明確にする取り組みが進めば、結果として従来の取引慣行を見直す契機になる可能性もあります。
本稿では、国が進める一人親方の取引適正化の内容を整理しながら、偽装一人親方問題との関係について考えてみたいと思います。
まず整理しておきたいのは、国土交通省が進めている取引適正化の目的です。
建設業では、工事内容や請負代金、工期などが十分に整理されないまま仕事が進むことも珍しくありませんでした。特に中小建設業者や一人親方との取引では、「長年の付き合いだから」「いつもの仕事だから」といった理由で、書面を交わさずに工事が始まるケースも見受けられます。
しかし、そのような取引では後になってトラブルが発生することがあります。
どこまでが契約範囲なのか。
追加工事の費用は誰が負担するのか。
請負代金はいくらなのか。
こうした点が曖昧なままでは、発注者側と受注者側の認識にずれが生じる可能性があります。
そこで国は、契約内容の書面化や取引条件の明確化を進めることで、建設業界の商取引をより透明なものにしようとしています。
重要なのは、これらの施策が必ずしも一人親方だけを対象としたものではないという点です。建設業界全体の取引慣行を見直し、適正な契約関係を構築することが大きな方向性といえるでしょう。
一人親方の取引適正化が進む中で、しばしば話題になるのが偽装一人親方の問題です。
一人親方は本来、独立した事業者です。仕事を受けるかどうかを自ら判断し、契約条件についても事業者として交渉を行います。
しかし実際には、形式上は個人事業主であっても、働き方の実態を見ると会社の従業員に近いケースが存在すると指摘されることがあります。
例えば、
– 毎日決まった時間に出勤する
– 会社から細かな作業指示を受ける
– 他社の仕事を自由に受けられない
– 報酬体系が労働時間に連動している
といった状況が見られる場合です。
もちろん、個別のケースが直ちに問題になるわけではありません。また、労働者性の判断は契約書だけで決まるものでもありません。
ただ、こうした議論が以前から存在していることを踏まえると、契約内容や取引実態の明確化が進むことで、従来よりも契約と実態の整合性が意識されるようになる可能性はあるでしょう。
その意味では、取引適正化の流れと偽装一人親方の問題は、まったく無関係とは言い切れないようにも思われます。
この問題は一人親方だけの話ではありません。
むしろ元請企業や下請企業にとっても、取引のあり方を見直すきっかけになる可能性があります。
これまで現場では、「本人が一人親方として働きたいと言っている」「昔からこの契約形態でやっている」という理由で契約内容を深く検討しないケースもあったかもしれません。
しかし、今後は契約書や注文書の整備だけでなく、実際の取引実態についても一定の説明が求められる場面が増えることが考えられます。
特に大手企業や公共工事に関わる案件では、下請体制やコンプライアンスに対する関心が高まっています。
そのため元請企業としては、
契約内容は明確か。
請負としての実態があるか。
書類は適切に保存されているか。
といった視点で確認を行うことが重要になるでしょう。
これはリスク回避だけではなく、健全な取引関係を構築するための取り組みともいえます。
取引適正化の流れは、建設業許可の実務とも無関係ではありません。
建設業許可の取得や更新、業種追加などでは、請求書や契約書、注文書などの客観的資料が重要になります。
例えば実務経験を証明する場面では、「実際に工事を行っていた」という説明だけでは足りず、工事内容や契約関係を示す資料が求められる場合があります。
また、一人親方として活動していた期間を説明する際にも、継続的な事業実態を示す資料が必要になります。
昔からやっていることと、行政手続で証明できることは別物です。
そのため、契約書や見積書、請求書、入金記録などを日頃から整理しておくことは、取引適正化への対応だけではなく、将来の許可申請や更新手続への備えという意味でも重要です。
建設業許可の相談現場でも、「当時の資料が残っていないため証明に苦労する」というケースは少なくありません。
だからこそ、今回の流れを単なる規制強化として受け止めるのではなく、経営管理体制を整備する機会として捉える視点も必要ではないでしょうか。
国土交通省が進める一人親方の取引適正化は、契約内容の明確化や取引条件の適正化を通じて、建設業界における商取引の透明性を高めることを目的とした取り組みです。
そのため、制度の趣旨を単純に「偽装一人親方対策」と捉えるのは適切ではないかもしれません。
ただし、契約書の整備や取引実態の確認が進めば、結果として契約形態と実態の整合性がこれまで以上に意識されるようになることも考えられます。その意味では、従来から議論されてきた偽装一人親方の問題についても、見直しを促す側面があるように思われます。
改正建設業法の流れは、単なる書類作成の義務化ではありません。建設業界全体が「口約束の世界」から「適正な商取引の世界」へ移行する大きな転換点です。
一人親方にとっても、元請企業にとっても、これからは職人としての技術だけではなく、事業者としての責任と経営意識が求められる時代になっていくでしょう。
今の対応が、将来の建設業許可の取得や更新、取引先からの信頼、そして持続的な事業成長につながるという視点で、改めて契約や取引管理のあり方を見直してみてはいかがでしょうか。
建設業許可は、取得することが目的ではありません。会社の成長につなげてこそ、本当の価値があります。
いそむら行政書士事務所は、江戸川区・葛飾区を中心に東京東部エリアで建設業に専門特化し、建設業許可の取得はもちろん、その後の資金繰りや経営改善、事業の成長まで一貫してサポートしています。
20年以上の経営経験を活かし、税理士・社労士・金融機関などの専門家とも連携しながら、建設会社が抱える経営課題をワンストップで支援します。(お問合せは公式LINEより)
CONTACT
ご質問やご相談がございましたら、お気軽にお問合せください。
専門スタッフが丁寧に対応いたします。
友だち登録後お問合せください。
24時間365日受付
対応地域
東京都:
江戸川区・葛飾区・台東区・墨田区・江東区・足立区・荒川区