行政書士
財務コンサルタント
磯村 威暢
2,000万円の負債がある会社を復活させた財務管理力と、採用から資金繰り、設備投資まで、経営者として20年のキャリアで培った問題解決力を活かして中小建設業者の経営をトータルサポート。
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[建設業許可]
建設業許可に関する相談の中で、よく耳にするのが「工事代金が500万円未満だから建設業許可は不要ですよね」という言葉です。
確かに建設業法では、一定金額未満の工事については「軽微な建設工事」として建設業許可を必要としないとされています。そのため、金額基準だけを見れば「許可は不要」と考えたくなるのも無理はありません。
しかし実務の現場では、この理解だけで判断してしまうと大きなリスクを抱えることになります。
なぜなら、行政が見ているのは単なる契約金額ではなく、「実質的にどのような工事なのか」という点だからです。
特に注意したいのが、「工事を分割した場合」と「一体工事と判断される場合」です。
本記事では、軽微な工事の基本的な考え方と、見落とされがちな“一体工事”の考え方について解説いたします。
建設業法では、次の工事を「軽微な建設工事」と定義しています。
建築一式工事については、1件の請負代金が1,500万円未満の工事、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事です。これ以外の専門工事については、1件の請負代金が500万円未満の工事が該当します。
例えば、内装工事を450万円で請け負う場合や、塗装工事を300万円で受注する場合には、原則として建設業許可は不要です。
ここで多くの事業者が、「500万円を超えなければ問題ない」と理解します。
しかし、この考え方には重要な落とし穴があります。行政が判断するのは、契約書上の金額だけではありません。実際には、「その工事が本当に独立した工事なのか」「実質的には一つの工事ではないのか」という視点で確認されます。
つまり、契約書を分けたとしても、実態として一つの工事であれば、全体金額で判断される可能性があります。
例えば、ある事業者が600万円の内装改修工事を受注したとします。
この場合、建設業許可がなければ請け負うことができないから、
「300万円の工事契約を2本に分けよう」
「月をまたいで別契約にしよう」
と考えるケースがあります。
しかし、このような対応は原則として認められません。
建設業法では、正当な理由なく工事を分割して請負代金を小さく見せる行為を防ぐ考え方が採られています。なぜなら、もし契約書を分割するだけで許可制度を回避できるのであれば、建設業許可制度そのものが形骸化してしまうからです。
実際の行政調査では、
・工事場所が同一であるか
・発注者が同一であるか
・工事目的が共通しているか
・工期が連続しているか
などを総合的に見て判断されます。
つまり契約書が2通存在することよりも、「実態として何をやっているのか」が重視されます。
特に近年は、契約書だけでなく見積書、請求書、工程表、メールのやり取りなども含めて実態確認が行われることがあります。形式だけ整えても、実態が伴っていなければ行政の判断を覆すことは困難です。
重要になるのが「一体工事」という考え方です。
一体工事とは、複数の契約や工事に見えても、実質的には一つの工事として判断されるものを指します。
例えば、店舗改装工事において、
4月に内装工事を250万円
5月に電気工事を180万円
6月に設備工事を220万円
という形で契約が分かれていたとします。
個別に見ればいずれも500万円未満です。
しかし、店舗のリニューアルという一つの目的のために行われているのであれば、行政からは一体工事として見られる可能性があります。
その場合、工事全体の金額は650万円となり、軽微な工事には該当しないという判断になり得ます。
実務上、特に注意が必要なのは元請業者と下請業者の関係です。
元請から「契約を分ければ大丈夫」と説明を受け、そのまま受注してしまうケースもあるかもしれません。
しかし、後に行政処分や許可申請時の問題が生じた場合、「元請に言われたから」という説明が通用するわけではありません。最終的には請負を行った事業者自身が責任を負うことになります。
建設業法の運用において一貫している考え方があります。
それは「形式より実態を重視する」ということです。
契約書の名称や契約本数よりも、実際にどのような工事が行われたのかが重要視されます。
そのため、
「契約を分けたから問題ない」
「請求書を別にしたから大丈夫」
「工期をずらしたから軽微工事になる」
という発想は危険です。
むしろ許可が必要かどうか迷う案件ほど、工事全体を俯瞰して検討する必要があります。
建設業許可は単なる行政手続ではありません。一定規模以上の工事を請け負う事業者に対し、経営的基盤や技術力、法令遵守体制を求める制度です。その趣旨を理解すると、「形式的な分割による回避」が認められにくい理由も見えてきます。
「500万円未満だから建設業許可は不要」という理解は、必ずしも間違いではありません。
しかし、それはあくまで工事が独立していることが前提です。
実務では、一見すると複数の工事に見えても、一体工事として評価されるケースが少なくありません。
特に工事の分割契約や追加工事が発生する案件では、契約金額だけで判断するのではなく、工事全体の実態を確認することが重要です。
建設業許可の要否は「契約書の書き方」で決まるものではなく、「実質的にどのような工事を請け負っているのか」で判断されます。
軽微な工事の金額基準を理解することはもちろん大切ですが、それ以上に“一体工事”という考え方を理解することが、法令遵守と事業リスクの回避につながります。
建設業許可は、取得することが目的ではありません。会社の成長につなげてこそ、本当の価値があります。
いそむら行政書士事務所は、江戸川区・葛飾区を中心に東京東部エリアで建設業に専門特化し、建設業許可の取得はもちろん、その後の資金繰りや経営改善、事業の成長まで一貫してサポートしています。20年以上の経営経験を活かし、税理士・社労士・金融機関などの専門家とも連携しながら、建設会社が抱える経営課題をワンストップで支援します。
建設業許可を取ることではなく、その許可を会社の成長につなげること。それが、当事務所の仕事です。
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