
行政書士
財務コンサルタント
磯村 威暢
2,000万円の負債がある会社を復活させた財務管理力と、採用から資金繰り、設備投資まで、経営者として20年のキャリアで培った問題解決力を活かして中小建設業者の経営をトータルサポート。
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[持続可能な経営支援]
貸借対照表(B/S)を分析することで、企業の「①安全性(無理がかかっていないか)」、「②効率性(無駄がないか)」、「③借入余力」を評価することができます。これらの情報は、同じ決算書類である損益計算書(P/L)では十分に把握することが難しいです。今回は、これらの項目の中から「借入余力」を評価する指標について詳しく解説します。
中小企業が活用し得る資金調達の方法として、間接金融(銀行融資など)、直接金融(ベンチャーキャピタルや個人投資家からの出資など)、助成金・補助金などが挙げられますが、一般的な中小企業が利用しやすい資金調達方法と言えば、やはり間接金融である融資になります。 そして、この融資を受ける際に、金融機関は当然、融資判断の重要指標としてその企業の借入余力を評価します。借入余力とは、企業が追加の借入を行う際にどれだけの返済能力があるかを示す指標です。 したがって、中小企業は、自社の借入余力がどの程度かを把握しておくことが経営上非常に重要です。そこで、この後の章では、借入余力を見る4つの指標について詳しく解説していきます。
最初に償却前経常利益について説明します。まず、経常利益とは、その企業の通常の営業活動とその周辺活動から生み出した利益(おカネ)です。そこに減価償却費を加えると償却前経常利益となります。減価償却費は、企業の損益計算書において費用として計上され、利益を減少させる要因となりますが、実際のキャッシュアウト(おカネの支出)を伴わないため、借入の返済財源として見ることができます。償却前経常利益は、簡易キャッシュフロー(CF)とも言います。
例えば、ある企業の年間の経常利益が500万円、減価償却費が150万円の場合、この企業は年間650万円まで借入金の返済が可能という見方ができるわけです。
つぎに借入月商倍率です。これは何となく分かると思うのですが、企業の月間売上高に対する借入金の割合を示します。具体的には、借入金総額を月間売上高で割ることで算出され、おおよその借入限度額を判断する目安になります。
この数値が高いほど返済リスクが高いと判断されます。借入月商倍率が3倍以下であれば、一般的には安全とされます。逆に、6倍以上になると返済リスクが高まり、追加の融資を受けるのは難しくなってきます。この指標は、運転資金としての借入量を量る指標であり、設備投資が多い会社とそうでない会社で見方がかわります。簡易的なイメージをつかむのに便利な指標です。
つづいては、債務償還年数です。債務償還年数とは、企業が現在の収益力を維持した場合に、借入金を全額返済するのに何年かかるかを示す指標です。債務償還年数は以下のように計算されます
有利子負債総額とは、企業が負っている利息付きの借入金の総額を指します。債務償還年数が短いほど、企業は借入金を迅速に返済できる能力が高いと判断されます。一般的に、債務償還年数が10年以下であれば安全とされ、20年以上になると返済リスクが高いと見なされます。
最後はインタレスト・カバレッジ・レシオです。横文字で難しく感じますが、インタレストとは利息、レシオとは指標です。つまりは、企業の借入金に対する利息支払能力を評価するための指標ということです。計算式は以下のとおりです
この数値が高いほど、企業は利息支払い能力が高く、財務の安全性が高いと判断されます。一般的に、インタレスト・カバレッジ・レシオが1.0を上回ることが望ましく、1.0未満の場合は利息支払いに十分な利益が確保できていないとみなされます。
以上のように、中小企業が借入余力を評価するためには、償却前経常利益、借入月商倍率、債務償還年数、インタレスト・カバレッジ・レシオの4つの指標が重要です。これらの指標を適切に把握し、管理することで、企業は健全な財務状況を維持し、安定した経営を続けることができます。金融機関との信頼関係を築くためにも、これらの指標を定期的に見直し、必要に応じて改善策を講じることが求められます。もし借入余力に問題がありそうな場合は、早めに対策を講じることが重要です。財務の専門家へのご相談をおすすめいたします。専門家のアドバイスを受けることで、適切な改善策を見つけ、企業の財務体質を強化することができます。
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