
行政書士
財務コンサルタント
磯村 威暢
2,000万円の負債がある会社を復活させた財務管理力と、採用から資金繰り、設備投資まで、経営者として20年のキャリアで培った問題解決力を活かして中小建設業者の経営をトータルサポート。
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[持続可能な経営支援]
銀行から融資を受けると一口に言っても、資金使途や融資の期間などによって融資の方法は異なります。銀行からの融資が、重要な資金調達の手段となる中小企業経営者にとって、それぞれの融資の特徴を理解しておくことは非常に重要です。特に、適切な融資方法を選択することで、事業の成長や安定に大きく寄与することができます。そこで今回の記事では、中小企業経営者が知っておくべき4つの代表的な融資方法について、具体的な事例を交えながら詳しく解説してまいります。さらに、各融資方法のメリット・デメリットについても触れていきますので、ぜひ参考にしてください。
融資の種類には様々な形態がありますが、代表的な融資形態として以下の4つが挙げられます。左から右へ行くほど、融資する銀行のリスクが高まります。つまり、企業側にとっては右に行くほど借入の難易度が高まることになります。
手形割引とは、会社が売上代金として受取った手形を、銀行に買い取ってもらうことで資金調達する方法です。買い取った手形は、銀行が支払期日に取り立てて回収します。割引を行う会社は銀行に割引料を支払います。
万一買い取った手形が不渡りとなった場合は、割引を依頼した会社は銀行に対して買い戻し義務があります。そのため、銀行は、手形割引を行った会社が、手形が不渡りとなった場合に買い戻す余力があるかを審査します。また手形割引では、割引を行う会社だけでなく、手形を振り出した会社が、手形を決済できない支払い能力の低い会社ではないかも審査します。
銀行にとって手形割引は、買い取った手形を支払期日に取り立てて回収でき、手形が不渡りとなった場合には、割引を行った会社から回収ができるため、他の融資方法に比べ回収できないリスクが低く、4つの融資方法の中では銀行が最も行いやすい融資方法になります。
さらに、手形割引は迅速な資金調達が可能であり、企業のキャッシュフロー改善にも寄与します。そのため、多くの中小企業が利用する手段となっています。
手形貸付とは、会社が借入用の手形を銀行に振り出して融資を受ける方法です。借入用手形は、当座預金口座を持たない会社や通常の商取引で手形を振り出すことがない会社でも振り出すことができ、手形の支払期日には返済期日が書かれます。手形貸付は、融資を受けるごとに連帯保証人の署名や商業登記簿などの提出が不要で、手続きが簡単なため、頻繁に利用されることの多い1年以内の短期融資に向いた融資方法です。借入用手形も手形である以上、支払期日までに決済されない場合、銀行は不渡りにすることができます。ただ、実務的には決済されないからと言って不渡りにしても銀行にはメリットがないため、不渡りにするのではなく時間をかけてでも返済を求めることがほとんどです。
手形貸付の代表的な資金使途として「つなぎ資金」があります。建設業やシステム開発業などのように、売上金の入金前に材料費や外注費などが先行して出ていく業種で、つなぎ資金のために手形貸付が利用されることが多くあります。また、経常運転資金として手形貸付が利用されることもありますが、経常運転資金は常に必要となる資金であるため、実際には返済することができず、返済の期日が来たら新たに同額で借り換える短期継続融資(短コロ)で対応することが多くなります。
以上のように、手形貸付は返済期間が1年以内のつなぎ資金や運転資金に利用されることが多く、長期融資に比べると貸し倒れリスクが低いため、銀行にとって取組みやすい融資方法の一つと言えます。
証書貸付とは、「金銭消費貸借契約書」を銀行と取り交わし融資を受ける方法です。契約時には、会社と連帯保証人(一般的には社長が連帯保証人になります)が署名押印し、商業登記簿や印鑑証明書などの提出も必要となります。証書貸付は、手続きが煩雑で時間もかかるため、利用頻度の高い短期融資には向いておらず、返済期間が1年以上になる長期融資の際に主に使われる融資方法です。
証書貸付は、主に長期運転資金と設備資金の融資に利用されます。長期運転資金とは、返済期間が1年を超える運転資金のことです。一方、設備資金については、証書貸付で融資を受けることが一般的です。なぜなら、会社は建物や機械などの設備を長期間にわたり使用して収益を上げるため、1年以内の返済では投資効果が出る前に返済を終えなくてはならず、資金繰りに無理が生じてしまうからです。そのため、設備資金の融資は1年を超える長期の返済期間で設定されることが一般的です。
銀行にとって、証書貸付は返済期間が長くなるため、その分貸し倒れリスクも高まります。そのため、証書貸付はプロパー融資が少なく、保証協会の保証付きの証書貸付が多くなる傾向にあります。
当座貸越とは、融資の限度額(極度額)を設定し、極度額内であれば自由に資金を借りたり、返したりできる融資方法です。例えば、1,000万円の極度額を設定すれば、1,000万円の枠内はいつでも貸したり、返したりが自由にでき、且つ、契約期間内であれば借りっぱなしにすることもできます。
当座貸越は、必要な時にすぐに資金を借りることができるので、会社にとっては非常に使い勝手の良い融資方法になりますが、銀行にとってはリスクの高い融資になります。そのため、財務内容の良い会社か、優良な不動産などの担保を入れなければ審査は通りません。
当座貸越の契約期間は通常1年~2年で、期間が満了する直前に更新の審査が行われます。もし財務内容が悪化し、審査が通らずに当座貸越の更新が出来なかった場合は、貸越残高を一括返済しなければなりません。ただし、まとまった金額となるため一括返済できないケースも多く、その場合は貸越残高を長期融資に変更し、分割返済することが一般的です。
以上4つの代表的な融資方法について解説してまいりました。中小企業の資金調達は銀行融資がやはり王道となります。中小企業経営者は、資金調達を主体的に進めていくうえでも今回解説したような融資の仕組みをしっかりと理解し銀行との融資交渉に臨むことが大切です。特に、企業の成長段階や資金ニーズに応じて最適な融資方法を選択することで、経営の安定性や成長を促進することができます。
資金調達を戦略的に進めるためには、財務の専門家のサポートを受けることをおすすめします。専門家のアドバイスを受けることで、より効果的な資金調達が可能となります。今後も、適切な融資方法を理解し、効果的な資金調達を行っていきましょう。
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