
行政書士
財務コンサルタント
磯村 威暢
2,000万円の負債がある会社を復活させた財務管理力と、採用から資金繰り、設備投資まで、経営者として20年のキャリアで培った問題解決力を活かして中小建設業者の経営をトータルサポート。
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[持続可能な経営支援]
金融機関からの資金調達がメインとなる中小企業にとって、メガバンク、地方銀行、信金・信組など金融機関の違いについて理解しておくことは、経営上とても重要なことです。この点を理解していないと、的外れな融資依頼を金融機関にすることになり兼ねません。特に、企業規模によって最適な金融機関の選択肢が変わってくるため、自社に合った金融機関を見極めることが不可欠です。そこで、今回は各金融機関の特徴について詳しく解説してまいります。
金融機関は、下の表のように民間金融機関と政府系金融機関に大別することができます。政府系金融機関は、民間金融機関の補完というのが基本スタンスになります。
メガバンクとは、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の3行を呼ぶことが一般的で、これにりそな銀行も含めて4大銀行と呼ぶこともあります。どの銀行も営利法人である株式会社として運営されており、監督官庁は「金融庁」になります。
メガバンクは、年商規模の大きな会社(10億円以上)を対象としており、優良な企業に対しては、他の金融機関では取り扱えないような低い金利で融資をしてくれます。一方で、金額の小さい融資案件や創業間もない会社、小規模な会社は敬遠する傾向があります。また、融資残高が少ない、年商が小さい、財務内容が悪いなどの企業は得意先係の訪問対象外となるため、中小企業零細企業にとってはマッチしづらい金融機関と言えます。
地方銀行は、メガバンクと同じく銀行法に基づく「銀行」ではありますが、メガバンクが全国に店舗展開しているのに対し、地方銀行は、本店所在地のある都道府県を中心に店舗展開しています。そのため、地元優良企業のメインバンクとなっていることが多くあります。
地方銀行の融資スタンスは、信用保証協会の保証付き融資が中心で、実行額が数千万円の融資だけでなく、数百万円の小さな金額の融資にも対応してくれます。これは、地域の中小企業や個人事業主の資金調達を支援する上で重要な役割を果たしています。ただし、プロパー融資には積極的ではなく、プロパー融資の場合は金利がメガバンクよりも高くなる傾向にあります。
近年では、地方銀行は、経営統合や業務提携などを通じて、経営基盤の強化を図っています。これは、人口減少や低金利などの影響で、地方銀行の経営環境が厳しくなっているためです。
信用金庫・信用組合(信金・信組)は、ともに非営利の協同組織金融機関であり、地域の個人や法人が会員・組合員となって、互いに地域の繁栄を図る相互扶助を目的としています。そのため、会員・組合員になれるのは、原則として信金・信組のある地域に住所や住まいがある人や事業所を有する法人・個人、およびその事業所に勤務する人になります。
信金・信組ともに、融資取引できるのは原則として会員・組合員となります。つまり、信金・信組から融資を受ける場合には、会員・組合員となる必要があります。ただし、近年では会員外への融資も一部認められるようになってきています。
融資スタンスは、信金・信組ともに信用保証協会による保証付き融資が基本になります。1件あたりの融資取扱金額は、銀行に比べると小さいため、企業規模が大きくなってくると、信金や信組との取引だけでは不十分となり、地銀やメガバンクとの取引が必要となってくる場合があります。プロパー融資には消極的な傾向がありますが、近年では地域経済の活性化のために、プロパー融資にも積極的に取り組む信金・信組も増えてきています。プロパー融資の場合、金利はメガバンクや地銀よりも高くなる傾向がありますが、審査の柔軟性や地域密着型のサポートが期待できます。
中小零細企業にとって、信金・信組の営業スタンスは大きな魅力です。「face to face」を謳い文句とし、得意先係が毎月定期的に会社訪問を実施し、金額の小さな融資や、業績があまり良くない会社にも親身な対応をしてくれます。また、経営相談やビジネスマッチングなど、融資以外の支援も積極的に行っています。そのため、中小零細企業にとっては有難い存在です。
日本政策金融公庫は、2018年に国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫、国際協力銀行の統合により新しく設立された政府全額出資の金融機関です。政府系金融機関という事では、信用保証協会と同じですが、その違いとして、信用保証協会は、「信用保証」が主要業務であるため、直接貸出しはしません。一方、日本政策金融公庫は、企業に直接貸出しをする政府系の金融機関です。
公庫は、メガバンクや地方銀行では融資を受けにくい中小零細企業や創業期の会社などへ積極的に融資を行っています。ただし、公庫の融資スタンスは、あくまでも民間金融機関の補完となりますので、公庫がメインバンクになることはありません。会社の成長と共に、融資先は公庫から地銀や信金・信組へと移行していくことになります。公庫を利用するメリットとしては、民間金融機関よりも安い金利で融資を受けられることがあげられます。
なお、公庫は民間金融機関のように、得意先担当がついて会社を訪問したり、取引先企業の状況を把握したりすることはありません。
メガバンク、地方銀行、信用金庫・信用組合、そして日本政策金融公庫。これら金融機関の違いについて解説してきました。近年、中小企業においてもメガバンクやネット銀行との取引が増加傾向にあります。確かに、そのブランドイメージや振込手数料の安さといった利便性は魅力的に映るかもしれません。しかし、会社経営において、特に中小企業にとって、最も重要な要素は資金調達です。 中小企業経営者にとって、いかに資金調達しやすい環境を構築するかは、経営を安定させ、成長を加速させる上で不可欠な課題です。そのためには、取引金融機関の選定が極めて重要であり、戦略的に進める必要があります。自社の事業規模や成長段階、資金ニーズに合わせて、最適な金融機関を選択することを心掛けましょう。
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